座標系という仕組み(システム)について大まかに理解する
このページのキーワード(座標系、座標参照系、空間参照系、測地系、JGD2011)
- 座標系:GISに限らない一般的な「系:仕組み」という意味での座標系:コトバンクに掲載されていた大辞林第3版からの引用を示すと「座標を定めるシステム。座標の種類・原点・座標軸などを総称する」となっている。
- 座標参照系(CRS):座標を定められた決まりに基づいて決める仕組み。(Coordinate Reference System)リンク先の記事タイトルは座標系となっているが、内容は座標参照系の内容。地理座標系と投影座標系については、本文参照のあとで、ESRIジャパンによるこちらのリンク「座標系とは?|GIS基礎解説」を参照するとわかり易い。やや難解な「投影座標系では地球の形状なども考慮して投影を行うため、地理座標系の定義も含まれる」という説明で立ち止まらずに先へ進んでほしい。
- 空間参照系(SRS):座標参照系と同じ。(Spatial Reference System)QGIS 2.18版では、空間参照システムの選択という画面でCRSを選ぶ。この画面を呼び出すときのレイヤパネルでの右クリックメニュー(コンテキストメニュー)は「レイヤCRSの設定」と表記されている。
- 測地系:パスコの「測地系とは?(GISへの影響)」より引用「明治時代、東京天文台があった東京都港区麻布台の地を経緯度の原点として、日本測地系が定められ・・・・」過去に使われていた日本測地系に対して、平成14年4月の測量法改正で、日本の測地系も世界測地系が基準となった。これが、JGD2000:日本測地系2000(Japanese Geodetic Datum 2000)と名付けられているために混乱する。
www.pasco.co.jp
(補足)4.の「測地系」と5.の「JGD2011」は、後回しにしてもらえばよい。 - JGD2011:世界測地系を基準とするJGD2000(日本測地系2000)の謎を乗り越えると、さらにJGD2011があることに気づく。これは、インフォマティクス社のリンクを参照する。「JGD2011へ移行したきっかけは、東日本大震災による大規模な地殻変動の発生」という説明は興味深い。
リンク先より引用「※追記(2014年9月)EPSG v8.4 でJGD2011のデータムや座標参照系が登録された。主な座標参照系のコードは、緯度/経度:6668, 平面直角座標系:6669-6687」
座標系という仕組み(システム)について大まかに理解する
はじめに
住所からの経度・緯度の生成をジオコーディングもしくはアドレスマッチングという。これは、GISで利用可能な地理空間情報を得るために行う。GISでは、経度・緯度以外にも、様々な種類の位置情報を利用する。それは、地球がやや楕円の球体で、地図は平面であることに起因する。経度・緯度には、地球がどのような楕円体であるとするかによって若干のちがいが生じる。また、原点をどこにするかによって経度・緯度は異なる。そして、楕円体の地球をどのような方法で平面に表現するかによって、投影法にちがいがでる。(地図の投影法について論じれば1冊の本になる。たとえば『地図投影法 地理空間情報の技法』がある。GISの利用が、膨大な学問の積み重ねのうえにあることは知っておいてもよいだろう)
1.測地系と投影座標系
座標参照系は、2種類の系によって、ひとつに定まる仕組みだ。この2種類の仕組みを、測地系と投影座標系という。たとえば、測地系が世界測地系(JGD2000)で、投影座標系が経度・緯度であれば、EPSGコードは4612となって、座標参照系がひとつに決まる。
QGISにおける空間参照システム(座標参照系:CRS)の選択画面
地理座標系(経度・緯度)のJGD2000とJGD2011、および、投影座標系に平面直角座標系(Japan Plane Rectangular CS、CSは、Coodinate System)のEPSGコードがある。
2.EPSGコード
EPSGとは、このコード体系を作成した団体の名称で、この団体はすでに別の団体に吸収されたが、コードの名称として残っている。住所をジオコーディングした経度・緯度の位置情報を含む地理空間情報は、EPSGコード:4612を用いる場合が多い。今後は代わって、測地系にJGD2011が使用されることが増えていくのだろう。(測地系がJGD2011の場合、日本におけるEPSGコードは、66XXが多く定義されている)
IOGP(International Association of Oil & Gas Producers)によるEPSGコードのおおもと。EPSGデータセット http://www.epsg.org/
3.投影座標系と、地理座標系からの変換
経度・緯度は地理座標であることから、この座標系を地理座標系という。この座標系では(QGISの場合)面積や距離を測ることができない。(MANDARAでは経度・緯度の情報をもっているので面積や距離を測れると表記されている。GIS特有の難しい用語を知らずに利用できるように、内部処理で対応しているのだろう)
球体上における地理座標系を、平面の地図の上に投影した状態にする仕組みが、投影座標系と呼ばれるものだ。QGISを用いたGISの解説書の事例紹介にて、面積・距離を測るために頻繁に利用されるのが平面直角座標系だ。平面直角座標系という言葉は、面積や距離の計測が可能だということに合致してわかり易い。
平面直角座標系では、経度・緯度の狭い範囲ごとにEPSGコードが割り当てられている。日本の場合には東西南北に長い国土を有しているため、平面直角座標系が19に分けられている(19の系がある)。たとえば、島嶼(とうしょ)部を除く東京都、埼玉県、千葉県や福島県などを合わせた範囲はEPSGコード:2451で示される9系という平面直角座標系に該当する。
おわりに
冒頭「このページのキーワード」で紹介しなかったリンクを紹介する。様々な座標系のEPSGコードを一度に見ることが可能なWebページは多くないので重宝するだろう。
ここに、「GISを利用する際に、最初にして最大の壁である測地系やら投影座標系についてまとめました」とある。たしかに、そのとおりだろう。QGISにて、CRSが(EPSGコードが)ちがうレイヤを重ね合わせようとして、何が起こるかわかりませんが実行しますか?という脅しを見る。相互のCRSにどのようなちがいがあるために、何が起きようとしているのか。あるレイヤのCRSを変更したときに、何が起こってレイヤを見失ったのか。今でもQGISで、CRSに関するわからないことはたくさんある。
一度ひととおりを理解した後であれば、役に立ちそうなページを紹介して終わる。
リンクを示した各ページに少しずつお世話になりながら、何とか座標系への抵抗感なくQGISを操作できるようになってきた。この場をお借りして感謝申し上げたい。
(2018年12月13日追記)
初心者によくある誤りは、いきなり自分の使いたい座標系に定義してしまうことです。データの座標系とは異なる座標系に設定したい場合は、まずは正しい座標系で定義し、その後で、(ArcGISの場合 [投影変換] )ツールを用いて設定したい座標系に変換しましょう。
これは『 経済・政策分析のためのGIS入門 1:基礎(ArcGIS Pro対応)の、32頁からの引用だ。ArcGISに限らず、QGISでも「いきなり自分の使いたい座標系に定義」してしまうと、追加したレイヤがどこかへ行ってしまう。(レイヤパネルで右クリックして、レイヤの領域にズームする(Z)で見つかる)
「第4章 空間参照と座標系」を参照した。