foujitatsuの日記

QGISを操作する画面と作成した地図の画像を載せるブログ

基本項目の基盤地図で「建築物」のポリゴンを属性とあわせて見る

このページのキーワード(基盤地図(情報)、基本項目、建築物、ポリゴン、属性)

ほかに、普通建物 普通無壁舎 堅ろう建物 堅ろう無壁舎は、本文中で説明。

  1. 基盤地図(情報):国土地理院により提供されている基盤地図情報ダウンロードサービスから取得できるGML(JPGIS形式のXMLファイル)を、GISで表示した地図は基盤地図といえるだろう。基盤地図情報とは|国土地理院http://www.gsi.go.jp/kiban/towa.html)「基盤地図情報は、平成19年に成立した地理空間情報活用推進基本法で規定され」という記述があり、法律による用語だと知って納得した。
     ほかに「国土数値情報ダウンロードサービス 」というものがあって混乱するが、こちらの公開元は、国土交通省国土政策局国土情報課となっている国土数値情報ダウンロードサービスhttp://nlftp.mlit.go.jp/ksj/
    国土数値情報とは、(引用)
    「国土数値情報」とは、国土形成計画国土利用計画の策定等の国土政策の推進に資するために、地形、土地利用、公共施設などの国土に関する基礎的な情報をGISデータとして整備したものです。そのうち公開に差し支えないものについて、「地理空間情報活用推進基本法」等を踏まえて無償で提供しています。


  2. 基本項目:基盤地図情報ダウンロードサービスにて取得可能な三種類の地理空間情報「①基本項目」「②数値標高モデル」「③ジオイド・モデル」のうちのひとつ。基盤地図情報基本項目についてという国土地理院によるページがある。基盤地図情報基本項目について|基盤地図情報ダウンロードサービスhttps://fgd.gsi.go.jp/download/ref_kihon.html)このページにある整備項目を見てすべてわかればよいのだが、そうはいかなかったため、このことについてのページを用意した。
    リンク先より(引用)
    基本項目とは、基盤地図情報の13項目のうち、「測量の基準点」、「海岸線」、「行政区画の境界線及び代表点」、「道路縁」、「軌道の中心線」、「標高点」、「水涯線」、「建築物の外周線」、「市町村の町若しくは字の境界線及び代表点」、「街区の境界線及び代表点」の10項目です。


  3. 建築物:この語句のとおりの意味だが、ここでは基盤地図情報にて表示可能な「BldA Polygon」を指している。この「BldA Polygon」を、QGISの属性テーブルで見てみると、typeという列があり「普通建物」「堅ろう建物」「普通無壁舎」「堅ろう無壁舎」の4種類がある。基本項目の整備項目での表記は前述の引用にもあるとおり「建築物」だが、本文中では建物と記す。(4種類の建物については、出典元などの詳細を本文中に記した。)


  4. ポリゴン:GISのベクタレイヤには3種類ある。この3種類が、点(ポイント)、線(ライン)、面(ポリゴン)である。基本項目の基盤地図情報GISで表示する場合に、利用目的がすぐにわかったものは、ポイントを除き、一部のラインと、行政区画以外のポリゴンだった。
    (属性についても同じリンクに説明がある)

    www.pasco.co.jp




  5. 属性:地理空間情報は、位置情報と属性情報から構成されている。位置以外の様々な情報を属性情報と呼び、QGISの場合には、あるレイヤの属性情報を属性テーブルで参照・編集することができる。

 

 

基本項目の基盤地図で「建築物」のポリゴンを属性とあわせて見る

 

はじめに

 QGISが無作為に(同じ色が隣り合わないように)選んで着色した建物を見ていて、何かの役に立つのではないかと考えた結果、はじめに思い当たったのが住宅密集地の不燃化に関する検討だった。そして、BldAレイヤの属性テーブルを参照したところ、「type」という列に、「普通建物」「堅ろう建物」「普通無壁舎」「堅ろう無壁舎」の4種類が見つかった。

 

1.複数あるBldAレイヤに含まれた建物は分類されていない

(1)4種類の建物の分類が含まれた属性テーブルのイメージ

 2次メッシュ「533945」の BldA Polygon は、0001から0004まであるが、この4つのBldAレイヤに含まれる建物が分類されているのかというと、どうもそのようなことはなさそうだ。

普通建物 普通無壁舎 堅ろう建物 堅ろう無壁舎の4種類が偶然に混在している。

2次メッシュ番号「533945」の4つあるBldAレイヤの1つ「0003」の属性テーブル

 貼付した画像は、普通建物 普通無壁舎 堅ろう建物 堅ろう無壁舎の4種類が偶然に混在している属性テーブルの様子を示した。いまのところ、4つのBldレイヤの建物が、なにかの決まりで振り分けられている様子は見当たらない。(Bldは、BldL LineStringsというラインも含めて基盤地図情報ダウンロードサービスから取得したが、このページでは話題にあがらない)

 

(2)属性テーブルでのある属性の値による検索方法

 10万個以上の建物が含まれたBldA Polygon「0003」レイヤの中に、「堅ろう無壁舎」は2つしか含まれていなかった。属性テーブルにて、これを検索する方法を「普通無壁舎」の検索によって説明する。

ここまで簡単に済ませるためにテーブルの「列」としてきたが「カラム」を使用する。

属性テーブルのカラムフィルタにて「type」を選ぶ(QGIS 2.18.18)

 『QGIS入門【第2版】』に属性値の検索と選択を説明したページがある。ここまで簡単に済ませるために、テーブルの「列」と表記してきたが、書籍に合わせて「カラム」を使用する。ここでは、カラム「type」の属性値に「普通無壁舎」を入力して検索してみた。

1400レコードが属性値「普通無壁舎」に該当した,type「」

カラム「type」で属性値「普通無壁舎」を検索した結果(QGIS 2.18.18)

 検索の結果、属性値「普通無壁舎」に該当したレコードは1400あった。 

 

 

2.GISソフトウェアによるBldAレイヤ「0001」から「0004」の表示のちがい

(1)QGISのレイヤごとの塗り分けを確かめる

 BldAレイヤ「0001」から「0004」の塗り分けを複数のGISソフトウェアで確かめてみる。

QGISでのレイヤごとでの塗り分けと法則が異なることがわかった。

ほかのGISソフトウェアによるBldAレイヤの表示

 このGISソフトウェアでは、建物が3色で塗り分けられている。そして、少し見比べればわかるように、QGISのレイヤごとの塗り分けとは異なる法則で塗り分けされていることがわかった。 

この4つのレイヤの分類には、建物の種類や年代など何か法則があるのではないか。

QGISにて同じ範囲のBldAレイヤの「0001」から「0004」の塗り分けを比較する

 QGISでは、次のように「0001」から「0004」が塗り分けられている。 この4つのレイヤの分類には、建物の種類や年代など何か法則があるのではないか。法則があれば、このポリゴンを見るのがおもしろくなる。

「BldL LineStrings」は前述のとおりレイヤパネルで非表示としている。

BldAレイヤ「0001」から「0004」までの4色の対応をレイヤパネルで示す

 「BldL LineStrings」は1.(1)で括弧書きしたとおり、レイヤパネルにて非表示にしている。ふたつのGISによる表示のちがいについて、もう少し詳しく考える方法を、次節で試してみる。ここまでQGISでは、2500分の1よりも大きな1500分の1の縮尺で地図を表示していた。この先はさらに縮尺を大きくして、1000分の1にて地図を表示する。これは、各建物のラベルを判別しやすくするためだ。

 

 

3.QGISでのポリゴンへのラベル表示による検討

(1)レイヤごとの属性テーブルのカラムを選んでのラベル表示設定

 レイヤパネルにてBldAレイヤのひとつを選んで右クリックし、プロパティを選ぶ。

右クリックメニュー(コンテクストメニュー)よりプロパティ

レイヤパネルで右クリックしプロパティを選ぶ(QGIS 2.18.18)

 プロパティにてラベルを選び、「ラベルなし」から変更。

「ラベルなし」から「このレイヤのラベル表示」を選び、ラベル「type」にする。

BldAレイヤのひとつでプロパティを表示してラベルを選び「ラベルなし」から変更

 ラベルのプルダウンにて「ラベルなし」から「このレイヤのラベル表示」を選び、「type」に変更する。

この設定を「0001」から「0004」の全てのレイヤで行う。

BldAレイヤのプロパティのラベル「このレイヤのラベル表示」ラベル「type」

 この設定を「0001」から「0004」の全てのレイヤで行う。そうすると、QGISの地図が、かなり見にくいものにはなるが、ほかのGISでの塗り分けと比較するための表示だと割り切る。

 

 

(2)QGISにてBldAレイヤへラベルを表示した結果わかること

 ほかのGISでは、建物の「type」でBldA ポリゴンを塗り分けていたことがわかった。

建物の「type」のひとつで1400しかない「普通無壁舎」を探した。

ほかのGISソフトウェアによるBldAレイヤの表示と比較するQGISの地図範囲

 貼付したQGISの地図には、いくつかの「普通無壁舎」というラベルが表示されている。「普通無壁舎」は、建物が10万以上あるレイヤの属性テーブルの中に、1400しかないほど少ないとわかっているため「普通無壁舎」のラベルの個数に納得できる。その10万以上の属性テーブルに2つしかなかった「堅ろう無壁舎」はここにはない。

「堅ろう無壁舎」は、この地図上にひとつも無いため、3色での塗り分けとなっていた。

ほかのGISソフトウェアによるBldAレイヤの表示で塗り分けの法則に納得する

 「堅ろう無壁舎」は、この地図上にひとつも無いため、3色での塗り分けとなっていた。緑色はすべて「type」が「普通無壁舎」であるはずだが、QGISの地図ではいくつかのラベルが表示されていない。これらはQGISの「地物情報表示」の機能で「type」を確かめたい。

 

 

4.基盤地図情報の建築物の「type」に関する補足事項

(1)「普通建物」「堅ろう建物」「普通無壁舎」「堅ろう無壁舎」の4種類について

 建物の「type」4種類について、専門家によるブログがあったので紹介したい。

researchmap.jp

 この研究ブログページにて出典元とされている公共測量標準図式のリンク先は表示できなかったため、これを探してみると、国土地理院のサイトの中にあった。地理院ホーム > 公共測量 > 作業規程の準則のリンクを次に示す。

作業規程の準則 | 国土地理院https://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/jyunsoku/index.html

 このページにて「作業規程の準則(付録7 公共測量標準図式)[PDF 6,213KB] 平成28年9月27日更新」が見つかる。これで間違いないだろう。それでは、「普通建物」「堅ろう建物」「普通無壁舎」「堅ろう無壁舎」という定義はどのようなものだろうか。次のとおりとなる。

  • 普通建物:3階未満の建物及び3階以上の木造等で建築された建物をいう。

  • 堅ろう建物:鉄筋コンクリート等で建築された建物で、地上3階以上又は3階相当以上の高さのものをいう。

  • 普通無壁舎:側壁のない建物、温室及び工場内の建物類似の建築物で、3階未満のものをいう。

  • 堅ろう無壁舎:鉄筋コンクリート等で建築された側壁のない建物及び建物類似の建築物で、地上3階以上又は3階相当以上の高さのものをいう。

 専門家による2010年の研究ブログにあった建物4種類の説明と、平成28年版の「公共測量標準図式」の記述は一致していた。平成28年の更新にて、この4種類の定義に変更はなかったようだ。

 

 これらの、BldAポリゴンの「type」という属性によって、QGIS上でポリゴンを塗り分けることは可能だろうか。実際にやってみてから結論を示したいと思うが、数値の範囲ごとでポリゴンを塗り分けるという機能がQGISにはある。文字列一致による塗り分けもできてほしい。数値による塗り分けを、2016年のブログ記事から紹介する。


  QGIS – 数値による地図の塗り分け
  2016-11-07 (http://taustation.com/qgis-paint-by-numeric-data/

 

 属性テーブルのあるカラム(ここではBldA Polygonの「type」)の文字列によって塗り分けることは容易にできた。これは、スタイルを分類されたシンボルで塗り分けるといえる機能だ。

 

 

(2)属性ツール「地物情報表示」にてBldAポリゴンの「type」を確かめる

  QGISの地図にて、BldAレイヤにラベルを表示してほかのGISソフトウェアの塗り分けが建物の「type」によることを、3.(2)で確かめた。このとき、1000分の1の縮尺では、ポリゴン上のラベルが重なってしまうものについては、ラベルが表示されていなかった。この場合に「type」を確かめる方法は2つあり、ひとつは地図の縮尺を大きくして、ポリゴンを大きく表示すること。もうひとつは、「地物情報表示」にて「type」の内容を表示することだ。

 先の3.(2)の地図にあった特徴的な建物で、2つの「type」表示方法を試してみよう。まずは、縮尺を大きく200分の1にした。

3.(2)に貼付した地図では、この建物の中央「普通無壁舎」のラベルは表示されていなかった。

縮尺200分の1にてQGISの地図にて「普通無壁舎」に注目する

 先の3.(2)に貼付した地図では、この建物の中央「普通無壁舎」のラベルは表示されていなかった。縮尺を大きくすると表示される。

 同じ縮尺にてWMTSから取得した標準地図を重ねてみた。この建物は、国際仏教学大学院大学の校舎であることがわかった。そして、ラスタレイヤである標準地図は、この大きな縮尺ではドットが見えてギザギザした画像となる。標準地図の上にBldAレイヤのラベルが表示されることは発見だった。

ベクタレイヤ(ポリゴン)とラスタレイヤ(ドット画像)のちがいもわかる

縮尺200分の1にてBldAポリゴンに標準地図を重ねた(QGIS 2.18.18)

 このように比較してみると、BldAレイヤのベクタ(ポリゴン)と、標準地図のラスタ(ドット画像)のちがいも、わかり易い。続いて、地図ナビゲーションツールの「地物情報表示」を利用してみる。

 

 縮尺は800分の1にして、属性ツールの「地物情報表示」を利用する手順を記す。

  1. レイヤパネルでベクタレイヤ(ここでは、BldAレイヤ)をクリックする。
  2. 属性ツールバーで「地物情報表示」をクリックする。
  3. 属性を表示するポリゴンをクリックする。

 手順はこれだけだ。次のように地物情報を表示することができる。

このBldレイヤには属性テーブルに10万以上の建物が存在するため表示は遅い。

属性ツールバーにて「地物情報表示」を選び「普通無壁舎」のポリゴンをクリック

 このBldレイヤには、属性テーブルに10万以上の建物が存在するため、そこからクリックしたポリゴンの情報を取得して、QGISの画面に表示するまでには相応の時間がかかる。
 また、レイヤパネルで選んであるレイヤの地物情報しか表示できないため、BldAレイヤのように「0001」から「0004」の4つに分かれたレイヤでは使い勝手がわるい。かといって、4つのレイヤを結合して1つのレイヤにすると、属性テーブルが40万以上となることから、レイヤの結合が解決策になるかわからない。

 

 属性ツール「地物情報表示」では、ポリゴンを右クリックして「type」を表示する方法がある。右クリックでの表示は、初期設定が「type」の属性になっていないので、プロパティにて設定する必要がある。レイヤパネルのレイヤプロパティにて「ディスプレイ」を選び、マップチップ表示テキストに、フィールドー「type」を選ぶ。

クリックして「地物情報表示」を行うのと同様に、右クリックも時間がかかる。

レイヤパネルのプロパティで「ディスプレイ」-フィールド-「type」を選ぶ

 次のように、右クリックで建物の「type」が「普通無壁舎」であるとわかる。ただし、右クリックから表示までの時間がかかりすぎて、待っていられないほどだ。

右クリックしてから表示まではビジーとなって数秒かかる

右クリックにてBldAレイヤの「0002」で「普通無壁舎」だと表示

 右クリックしてから表示までは、ビジーとなって数秒かかる。このままでは、どちらの地物情報表示も使用できない。

 

 

おわりに

 QGISにて、基盤地図情報の基本項目のうち「建築物(建物)」に注目して、ほかのGISソフトウェアとの表示のちがいも踏まえて有用性について検討を行った。この検討自体が、基盤地図情報GMLファイルをベクタレイヤとして表示するための、大量の処理による表示の遅さに苦戦する結果となった。

 本文中でも利用したQGISのラベル表示や、縮尺設定の柔軟性、ラスタレイヤの地図を重ね合わせることなど、さまざまなQGISの機能が活かせそうな気配があったが、明確に何かが言えるまでには至らなかった。

 建物ポリゴンの4種類の「type」は、「燃えない・燃え広がらないまちづくり」を考える材料になるだろう。この検討にGISがどのように役立つか、今後さらに検討を深めたい。東京都の「木密地域不燃化10年プロジェクト」と連動した事業として、文京区の「不燃化特区」事業のリンクを紹介していったん終わりとする。

文京区 不燃化特区https://www.city.bunkyo.lg.jp/bosai/machizukuri/machidukuri/_19041.html